シアターコクーンに歌舞伎を観に行きました。
盟三五大切(かみかけて さんご たいせつ)です。
愛憎深く絡み合い、綿密な構成でグルグルとメビウスの輪のように繋がってゆく
物語でした。
自分を騙した、愛する女「小万」の首を打ち落とし、懐に入れ、
舞台に降る土砂降りの雨の中から霧雨の舞う客席沿いへと歩を進める
「源五兵衛」(中村橋之助さん)の言葉にならないほど思いを込められた表情が
美しく悲しく胸を打ちます。
持ち帰った首を目の前にぱくぱくと白いご飯を食べてゆく「源五兵衛」は、
首であっても「小万」を自分の物に出来た喜びとそれでも収まらぬ憎しみとが
入り交じり、人の思いの複雑さを感じます。
たとえ自分で殺して打ち落とした首でも、それは愛しい自分の女であり
愛しいからこそ裏切られた憎しみも激しく、正気と狂気は地つながりです。
ラストは幻想のような回り舞台で、死んだ人達すべてが幸せに暮らしている場面
あの世であっても救いがあります。
こんな複雑な感情を 私は表現できるだろうかと思いました。